2010年10月28日木曜日

Access Accepted第198回:創業50年を迎えるMidway

奥谷海人のAccess Accepted / 第198回:創業50年を迎えるMidwayについてのアレコレ

奥谷海人のAccess Accepted

 Midway Gamesといえば,テレビゲームの黎明期から業界にいる,アメリカの老舗パブリッシャの一つ。日本では直接パブリッシング業務は行っていないものの,ある程度の知名度を持つメーカーだろう。そんなMidway Gamesが,最近大きく揺らいでいるようだ。今回は,同社に関連した最近のニュースから,Midwayの50年に及ぶ歴史を振り返ってみたい。

創業50年を迎えるMidwayについてのアレコレ
大株主から見放されたMidway Games

 Midway Games(以下,Midway)株式のうち,87%を保有していた大株主が,そのすべてを売却したと報道され,Midwayの長い歴史に赤信号が灯ったようだ。

 ロイターが12月1日に報じたところによると,Summer Redstone(サマー?レッドストーン)氏が経営する持ち株会社,National Amusementsが,保有していたすべてのMidway株を,ある個人投資家に売却することで調整中とのこと。しかもその総額は,たったの10万ドル(約950万円)というから驚きだ。もっとも,Midwayには7200万ドル(約70億円)ほどの負債があり,新しい投資家がMidway Gamesの経営を続行するには,この全額を肩代わりする必要があるのだが。

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Midwayと聞いて,「モータルコンバット」以外にタイトルが思い浮かばないゲームファンも少なくないだろう。だが,同社は50年(ゲームは35年)にもおよぶ歴史を持つ会社なのである。そんな老舗が,現在,厳しい経営状態にあるわけだ

 Midwayは2008年9月,“年末を乗り切るため”にNational Amusementsから4000万ドル(約37億円)を借り入れたばかり。2007年からの業績悪化に歯止めがかけられない状態で,2008年3月にはCEOのDavid Zucker(デビッド?ザッカー)氏が,2007年度に記録した1億ドル(約92億円)という損失の責任を取る形で辞職。夏以降は,ロサンゼルス,オースティン,そして本社のあるシカゴのオフィスでリストラが実施され,10%の人員削減が行われたが,これに続き,会長になったばかりのレッドストーン氏の娘,Shari Redstone(シャーリー?レッドストーン)氏も,つい先ごろ辞任している。

 そもそも,ViacomやCBSなどのオーナーで,メディア産業のタイクーンとして知られるレッドストーン一族がMidwayの経営から手を引いたのは,National Amusementsが巨額の負債を抱えているからだといわれている。

 National Amusementsが保有しているMidwayの株は,現在の相場に照らし合わせると8000万ドル(約76億円)の価値がある。それを10万ドルで売却しようというのだから,よほどのことだ。

 それもそのはずで,National Amusementsは,2008年12月中旬までに,数十億ドル分に及ぶ負債をメインバンクに支払う期限が迫っており,同社も資金繰りに困っているようなのだ。

 Midway株の売却にによって,National Amusementsは,これまでに投資した6億ドル(約550億円)を失うことになるとシカゴトリビューン誌は報じている。Midway GamesとNational Amusementsの関係は2007年春から始まっているので,双方にとってあまりにも短い蜜月となった。

 

50年におよぶ歴史をバネに復活なるか

 Midwayが設立されたのは1958年のこと。つまり今年で50周年を迎えた,ゲーム業界でも屈指の歴史を誇る会社である。もともとはテーマパーク施設の製造/販売を行っており,1973年にゲーム業界に参入。1977年にはBally Home Library Computerという名のゲーム機をリリースしたこともある。

 1970年代にタイトーやナムコなどと提携し,アメリカで「スペースインベーダー」や「パックマン」「ギャラガ」といった歴史的な名作を展開したのもMidwayだった。そののち,「Tron」(1982年),「Spy Hunter」(1983年),「Rampage」(1986年)といったアーケードゲームを市場に送り出し,1980年代後半まで北米最大のアーケード用ゲーム機の会社として君臨。だが,1988年にはWMS Industriesというピンボール機のメーカーに買収されてしまう。

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2009年2月の発売が予定されているMidwayの新作アクション「The Wheelman」。暗殺や物資輸送を請け負う主人公が,スペインのバルセロナを舞台に活躍するというGTA風のアクションゲームで,PS3のほかにもXbox 360やPC向けのリリースが予定されている。同社の経営危機を救うことになるだろうか?

 その数年後,アーケード機としてリリースされたのが,Midwayを代表するフランチャイズとなった,「Mortal Kombat」である。アメリカでも大きな人気を得た「ストリートファイター II」への対抗馬として1992年に製作されたが,ブロック専用ボタンの使用,“Fatality”と呼ばれた過激なフィニッシュムーブ,そして隠しキャラクターの存在など,他の格闘ゲームにはない新要素が多く,とくにアメリカで大きな反響を呼んだ。

 ちなみに,1993年から94年にかけて,セガ?ジェネシスやアミーガ,NESやゲームボーイといったコンシューマー機向けに移植されたMortal Kombatは,版権を譲渡されたAcclaim Entertainmentの手になるもので,この時点でもまだ,Midwayはあくまでアーケード機の会社だったのだ。

 だが,市場がアーケードから家庭用ゲーム機に移行するにつれ,Midwayは衰退に陥っていく。そのため,1996年に「Midway Home Entertainment」という社名に変更して,NINTENDO 64やPlayStation向けのゲームを開発するコンシューマー機向けのブランドとしての出直しを図ることになる。当然,Mortal Kombatの版権も買い戻され,オリジナル開発者であるエド?ブーン(Ed Boon)氏とジョン?トビアス(John Tobias)氏も,新会社へと移った。

 1998年にはWMS Industriesから株式を買い取る形で完全独立を果たし,2001年までにピンボール機やアーケード機部門を整理。さらに2004年,シアトルのSurreal SoftwareやオースティンのInevitable Entertainmentといった開発会社を次々と傘下に収めていったが,結果としてこの積極的な拡大政策が赤字額を増やすことにつながったわけだ。

 Mortal Kombat以外にもいくつかのヒット作や良作を生み出すことはあったにせよ,これといった作品を送り出せなかったMidwayは,アーケード時代のように,ゲーム業界にインパクトを与えることができなかった。

 Midwayがこれからどうなるのかは,National Amusementsから株式を購入した個人投資家と,現CEOのマット?ブーティ(Matt Booty)氏にかかっている。もっとも,俳優ヴィン?ディーゼルをフィーチャーしたグランド?セフト?オート風アクションゲーム「The Wheelman」や,ラスベガスでハチャメチャを繰り広げる「This is Vegas」,さらには同社が「Gears of War 2以上の評価を受けるはず」と期待する,未発表のタイトルも2009年中に控えており,半世紀の歴史を誇る古参メーカーの華麗な復活に期待したい。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。奥谷氏の8歳になる息子さんは,これまではカブトムシやカマキリに夢中になっていたのに,最近ではハ虫類に興味を持ち始めているとか。ミドリガメかウーパールーパーあたりかと思いきや,何とヘビをペットにしたいという。自分でインターネットで検索し,「クリスマスはキングスネーク,いやミルクスネークが欲しい」などと言っているのを聞きながら,奥谷氏は「どうせ冷凍マウスを解凍してエサをやるのはオレになるのだろう」と諦め気味で,これ以上息子さんの欲望が膨らまないように心から願っている。

※12月12日のAccess Acceptedは,取材のため休載いたします。ご了承ください。次回の更新は12月19日となります。


引用元:函館市歯科の総合情報サイト

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